与謝野晶子ミームの流れとfediverseへの流入について

このページは独自研究の可能性があります。このページは中立的で釣り合いのとれた観点を持っていない可能性があります。

はじめに

このページは、もともと2023年03月06日に公開したものです。

2022年11月にイーロン・マスクがtwitterを買収して以降、代替SNSとしてmastodonが注目を集めました。

2017年のmastodonブームによって日本語圏でも以前から名前が知られていたことと、海外メディアによる報道でmastodonの名前が挙がることが多かったためです。

一方misskeyはというと、買収以後はmisskeyのユーザー数も上昇したものの、mastodonと比較すると言及されることが少ない状況でした。このため、注目度も2022年末までは低い状況だったのです。

そこから2023年に入ると状況が変わります。

これには、twitterが01月13日にサードパーティ製クライアントアプリ禁止をしたこと、02月02日にtwitter APIの無料提供を終了し有料化の発表があったことが契機になっています。

しかし、これらの出来事以上にmisskeyにアテンションが集まる出来事がありました。2月中旬頃からmisskey.ioが紹介されはじめ、02月28日には日本語圏のtwitterで「misskey」がトレンド入りしたのです。

このトレンド入りの原因は、misskey上で形成された「与謝野晶子」、「レターパック」ミームがtwitter上で紹介され、このミームを紹介するツイートが同時多発的に話題になったためでした。

このページは、こうした流れについて当時調べた情報をまとめ、この現象についての所感をメモとして公開するために作成しました。

このページを公開してから2年が経とうとしています。

今現在、misskeyユーザーにおいてもXユーザーにおいても「与謝野晶子」や「レターパック」ミームは言及されることが少なくなり、時の流れに押し流された感があります。

他方X上ではmisskeyについて、いまだにこうしたミームによる印象をもって語っている方がいるところをしばしば見かけます。

振り返ってみると、2023年02月以降、misskey.ioはその登録ユーザーを急速に伸ばし、これがきっかけとなってmisskey.ioならびにmisskeyプロジェクトはその運営方針を新規ユーザーのコミュニティを重視する方向へ向かいました。

いまではあまり振り返られないこの時期は、misskeyコミュニティの歴史において重要な転換点だったのです。

2023年以降の2年で知り得た情報も多い。いま一度、この時期のできごとを振り返る作業をする必要があるのではないか。

こうした考えから、このページを改稿することにしました。


misskeyユーザー流入の流れ

まず、イーロン・マスクがtwitterを買収してからmisskeyに新規ユーザーが流入していく流れを年表形式でまとめてみよう。

この年表は、「分散SNS関連年表」からできごとを抜粋したうえで、関連した記述を追加・編集したものです。

2022年

  • 04月26日 twitterがElon Muskからの買収に合意したと報じられる。日本では「twitter有料化」、「mixi」がトレンド入りする。
    買収発表後の1日でmastodonのユーザーは3万人近く増えた。
    のちmisskeyプロジェクトにも参画するまっちゃてぃーはこの発表に関連したツイートでmisskeyを知ってmisskey.ioにアカウントを登録しており、この発表によるmisskeyへの流入はX騒動での流入第一波として位置づけられる。
  • 05月09日 misskey.ioにカスタム絵文字「レターパックで現金送れ」、「は全て詐欺です」が追加される。
    のち「レターパック」ミームの根幹になるカスタム絵文字。どのような経緯でこの絵文字が追加されたのかは判明していない。
  • 07月24日 まっちゃてぃーがgaku-tab-kill.comを開設する。
    2021年09月上旬に発生した「投票トーク」でのmisskeyブームによって、いわゆる「学タブ勢(とくに投票トークユーザーを「トート民」と呼ぶ)」がmisskeyに流入していた。
    このできごとはX騒動での流入とは文脈が異なるが、小中学生を中心とする「学タブ勢」の流入は当時のmisskeyコミュニティにおいて問題視されていた。
    自身も当時中学生だった第一波参加者のまっちゃてぃーはこれを意識して、半ばジョークとしてgaku-tab-kill.comを開設するが、小中学生を中心とする学タブ勢は「gaku-tab」の文字をみてこのインスタンスに集まった経緯がある。
    「学タブ勢」にかんする騒動を象徴するこのできごとは、twitter買収直前のmisskeyコミュニティを知るうえで重要なものとなっている。
  • 10月02日 かざみんがmisskey.io上で「にゃんにゃんぷっぷー」と投稿する。のちカスタム絵文字化される「にゃんぷっぷー」の初出。
    後にblobcatは「にゃんぷっぷー」と呼称されるようになり、これを通じてblobcatはmisskey.ioのマスコットキャラクター的位置づけになっていくことになる。
  • 10月27日 テスラ、Space XのCEOであるイーロン・マスクがTwitter社を買収する。
  • 11月18日 ハッシュタグ#RIPTwitterがツイッターの英語圏でトレンド入り、その後日本語圏でも「Twitter終了」がトレンド入りする。
    Twitter買収、#RIPTwitterがトレンド入りしたことでmisskeyに新規流入があったため、この時期の流入は第二波として位置づけられる。
    twitterの代替SNSとしてはmastodonが大々的に注目を集めており、misskeyはそれと比較するとあまり言及されていなかった(huffingtonpost.jpwired.jpのmastodon紹介記事、mastodon入門書の発売広瀬香美のvocalodon登録蓮舫のtoot.blue登録などからその雰囲気をうかがうことができる)。
  • 11月22日 misskey.ioの登録ユーザー数が1万人を突破する。
    第二波によるものか。
  • 12月09日 イーロン・マスクがツイッター上でtwitterにView Count機能やシャドウバンされているか確認できる機能などを追加するとツイートで予告する。
    その後23日には実際にツイートの閲覧数が表示されるようになった。シャドウバンチェック機能は2025年02月現在でも追加されていない。

2023年

  • 01月05日 syuiloがgihyo.jpでmisskey開発について連載すると発表する。
  • 01月13日 twitterがサードパーティ製クライアントアプリ禁止を発表する。 一部のサードパーティ製クライアントアプリで認証エラーが発生しており、代替SNSを求めるユーザーが増えるきっかけとなった。
  • 02月02日 twitterがAPIの無料提供を終了し9日に有料化すると発表を行う。 API有料化の発表は、twitterによって認証し作成したサービスのアカウントがログインできなくなるという危惧や、botの運用twitterとの連動サービスが利用できなくなる可能性が懸念される事態となり、Webサービス開発者の発言が拡散されたり、事態を懸念する報道がなされることによって代替SNSを求める声が高まることとなった。
    01月13日、02月02日の発表は、misskeyに新規流入をもたらした。第三波といえるか。
  • 02月03日 ケータイWatchで「次のTwitter」として「misskey」を紹介する記事が掲載される。
    MFMは紹介されておらず、すこしカスタム絵文字を紹介する記述がなされていた。
    X騒動以降、ある程度の規模のメディアとしてmisskeyを紹介した記事としては初期のものといえる。
  • 02月11日 misskey.ioにカスタム絵文字:yosano_akiko:が追加される。与謝野晶子の顔写真ではなく、文字のみの絵文字。 なぜこれが追加されたのかわかっていない。
    13日に本人の写真がカスタム絵文字申請されており、時系列的にみて:yosano_akiko:が:yosano_akiko_is_always_watching_you:申請の直接的な原因と考えられるが、実際にそうなのかはわかっていない。
  • 02月13日 捨てられたメガホンが、misskey.ioのdiscordサーバー上に、与謝野晶子の写真をカスタム絵文字として:yosano_akiko_is_always_watching_you:で申請する。
  • 02月17日 すまほん!!がtwitter上でmisskeyを紹介するツイートを行う。「次期Twitter」としてmisskeyを紹介し、リアクション機能を紹介した。この投稿が伸びたことでmisskeyが話題となった。
  • 02月18日 前日のすまほん!!のツイートとその反応をまとめたtogetterまとめが作成される。 治安が良いこと、スタンプが面白そうという反応が紹介されていたが、このまとめの中では「与謝野晶子」・「レターパック」ミーム、MFM芸はまったく言及されていなかった
    17日から18日にかけてのmisskey.ioの新規アカウント登録者は2000人ほどとされ、18日の一時は秒間100人ほどの新規登録者があったという。
    すまほん!!のツイートとtogetterまとめがそれぞれ伸びたことが、misskey.ioの新規流入をもたらした。
  • 02月19日 漫画『ゆるゆり』の作者であるなもりがmisskey.ioにアカウントを作成する。
  • 02月19日 twitterで「misskeyの使い方わかりました」と画像を添付したツイートがなされ話題となる。
    このツイートに添付されていた画像はあるノートのスクリーンショットであったが、与謝野晶子の文字カスタム絵文字と顔写真カスタム絵文字を使用したネタ投稿のものであった。画像のノートには「レターパックで現金送れ」、「与謝野晶子」、「ジョイマン高木」、「官営八幡製鉄所」のリアクションなどまったくつけられておらず、ミーム形成期の初期のノートである可能性がある。
    また、twitter上で与謝野晶子カスタム絵文字を紹介した極初期のツイートといえる。
  • 02月20日 14時12分頃、misskey.ioが著作権侵害の疑いのあるカスタム絵文字を削除する。また、19日頃からサーバー負荷軽減のため、既存のカスタム絵文字のデータサイズを圧縮する作業が行われていた。
    こうした経緯のため、一時、与謝野晶子の顔写真の絵文字、ジョイマン高木の絵文字、「レターパックで現金送れ」、「官営八幡製鐵所」のカスタム絵文字のみしかカスタム絵文字が使用できない状態となった
    これが、「レターパック」や「与謝野晶子」ネタがmisskey.io上で盛り上がる直接的な原因となった。
  • 02月21日 twitter上で「Misskeyのトレンドは与謝野晶子らしい」と画像を添付したツイートが話題になる。
    このツイートには、与謝野晶子カスタム絵文字を使用し、MFMを利用したノートのスクリーンショットが添付されていた。
  • 02月21日 kai-you.netがmisskeyの使い方を紹介する記事を掲載する。
    02月17日のすまほん!!のツイートを参照しており、執筆者はすまほん!!のツイートからmisskeyを知ったような記述をしている。
    この記事の中ではMFM芸に関する紹介はなされておらず、ミームについても言及されていない。
    掲載されているノートの写真には「レターパックで現金送れ」リアクションが多量につけられていること、与謝野晶子のリアクションはつけられておらず、ジョイマン高木と官営八幡製鉄所のリアクションが少しつけられていることが確認できる。
  • 02月23日 misskeyを「全盛期のTwitter以上にカオスな無法地帯」と紹介するツイートがなされ話題になる。「与謝野晶子」、「レターパック」、MFM芸のスクリーンショットが添付されている。
  • 02月23日 misskeyを「監視者のいない無法地帯slack」と紹介するツイートがなされ話題になる。「与謝野晶子」、「ジョイマン高木」ほか大量のカスタム絵文字を使用したノートのスクリーンショットが添付されている。
  • 02月24日 misskeyを「武器が豊富」とするMFMを紹介するツイートがなされ話題となる。「与謝野晶子」、「レターパック」、MFM芸のスクリーンショットが添付されている。
  • 02月28日 twitterにて「misskey」がトレンド入りする。トレンドトピックとして「与謝野晶子」と「レターパック」がmisskeyと関連してトレンド入りしていた。
    関連トレンドからわかるように、このトレンド入りはtwiiter上でmisskeyのミームが話題になったことによるものであった。
  • 03月01日 misskey.ioが03月01日23時頃から03月03日1時頃までサーバーを停止する。
  • 04月04日 Twitterのweb版クライアント上部に表示されている青い鳥のロゴが犬 (doge)に変更される。
  • 04月04日 twitter上で「みすきー」「ミスキー」「misskey」が再び日本のトレンドになる。それに関連して以前話題になったミーム「与謝野晶子」もトレンド入りした。

解説

大まかな流れは年表に書いたとおりです。

まず、流入した契機についてまとめてみましょう。

Xが買収されて以降、新規ユーザーが流入する波が4度ほどあったといえます。

そして、最も重要な波が第四波であるということ。これはすまほん!!の紹介ツイートによってはじまり、ミームがtwitterの紹介されたことが大きな役割を果たしました。

当時のmisskey.ioのユーザー数推移を見ると2023年02月から03月にかけてユーザー数が一気に増大していることがわかります。

リアルサウンドテックの村上さんへのインタビューで、2022年11月以前のmisskey.io登録者が7000人だが2023年3月には10万人になったと語られています。まさにこの時期の流入の激しさをものがたるエピソードでしょう。

そして、第四波にも、さながらP波とS波のような2つの段階があるといえます。

年表にあるとおり、02月17日のすまほん!!の紹介ツイートと、それに関連したツイートをまとめたtogetterでは、ミームが紹介されていなかったのです。

02月21日のkai-you.netの記事にあらわれているように、すまほん!!の紹介はインパクトのあるものでした。しかし、まず最初にそうして流入してきた「P波」のユーザーは「ミーム」を求めたものではなかったのです。

後にユーザー数増加の原動力となるミームは、19‐20日頃に成立したのです。

19日から20日頃に行われたmisskey.ioのカスタム絵文字の整理が、ミームの成立を促した。

それは、カスタム絵文字の整理によって一時的に使用できるカスタム絵文字が一時的に少なくなったことが原因だった。

この時、数少ない使用できるカスタム絵文字のなかに、インパクトのある「与謝野晶子」や「レターパック」があったことで、それを面白がる流れが生まれ、こうしてミームが成立したのでしょう。

そしてこのミームの成立には、新しさを求めてやってきた「P波」のユーザーが積極的に関与したのではないか。

twitterにはない「slackやdiscordのような」リアクション機能とカスタム絵文字、派手に装飾することができるMFM機能。これらを試しながら新しいSNSに順応しようと模索する過程で、与謝野晶子・レターパックミームが成立したのではないでしょうか。

そして、成立したミームは、twitterからお試しでやってきたtwitterユーザーによってtwitterに紹介された。

misskeyのトレンドがこのミームだと紹介され、そこに見出される「カオスな無法地帯」を求めて新規ユーザーが流入する。新規ユーザーは「監視者のいない無法地帯」を謳歌するようにさまざまな表現を行う。

こうしてmisskeyは「カオスな無法地帯」であるというイメージが生まれてしまった。

これはmisskeyというSNSを印象づける重要な要素となりました。名前を覚えられ、新奇なものとして記憶されるためにはこうしたパッケージ化は有用です。実際そうであるがゆえに、このミームによってmisskey.ioは数多くのユーザーを獲得した。

メモ

当初、misskey.ioにカスタム絵文字「yosano_akiko_is_always_watching_you」が追加された日付が分からなかったため、misskey.ioにカスタム絵文字が追加されたら通知するという「絵文字bot🤖(2代目)」の履歴を参照していた。

絵文字botにはyosano_akiko_is_always_watching_youの履歴が残っていなかったため、絵文字bot2代目が開始した2021年10月5日以前に追加されたと考えて、aqzの紹介ノートがmisskey.ioへyosano_akiko_is_always_watching_youを追加した直接の原因なのではないかと考察した。

川音リオのノートによれば、実際には2023年02月13日にカスタム絵文字の申請が出されたとのことで、aqzの紹介ノートは直接的な原因ではないことが判明した。

絵文字botによると、2023年02月11日にはカスタム絵文字:yosano_akiko:が追加されている。絵文字の追加からブームのはじまりを判断することが妥当かはおいておくとしても、2023年02月11日~2023年02月13日前後がmisskey.ioの与謝野晶子ブームにおける契機のひとつであるといえるだろう。

与謝野晶子ブームがふたば発祥であるという言説については、おおむね正しいと言えるが、ふたばのみで与謝野晶子ブームが成立したかというとそうではないと言えるだろう。特に、2020年12月27日の「与謝野晶子はなぜ力道山を殺さなかったのか」を紹介するツイートが重要なマイルストーンであると考えられる。

実際、ActivityPub上で登録したアカウントの投稿を記録し検索することができるサービス「notestock」を参照したところ、与謝野晶子をネタ的にあつかった投稿が2022年12月27日以前には一切なかったのに対し、以後には無数に存在したことが確認できる。

「与謝野晶子はなぜ力道山を殺さなかったのか」以前の与謝野晶子ミームの流れについてはよく分からない部分がおおい。 bokete.jpのボケがtwitterや個人のブログ、まとめサイトへ無断転載され拡散したことが与謝野晶子ミームにおける節目であったとは言えるだろう。与謝野晶子ミームに限らず、ふたばは、コラージュを中心として文化的な発信地として重要な場所であることは間違いない。一方でミームとは、拡散しなければ成立しない。拡散し、人の手(あるいは脳)を渡って進化しつづけることは、ミームとして成立する条件である。

義務教育で歴史を教わる以上、与謝野晶子自体は有名な存在であると言える。与謝野晶子をネタ的に消費する文化自体は、教科書の偉人の顔への落書きが話題となるようなサブカルチャーの延長だと考えられる。
とくに歴史や国語の教科書に載っているような偉人は、皆が知っており、教科書的なある種の「まじめさ」を纏っているという前提から、コラージュや落書きのモチーフとして古典的とさえといえる。
宝島系のサブカル雑誌、とくに雑誌『VOW』の「バカ画像」、「バカ画像」を源流としたpya!や2ch、画像掲示板での投稿と、それらを編集した雑誌やムック本、偉人をモチーフとしたゼロ年代のflashは、与謝野晶子ミームを面白がるセンスを育んだ文化的源流といえる。

最後に

与謝野晶子カスタム絵文字がmisskey.ioに申請された日付についての川音リオさんのノートを教えていただいた、misskey.ioの開墾かき氷クラブさんに感謝します。

pon.icuで投稿したyosano_akiko_is_always_watching_youについての考察は、憶測が多いこと、yosano_akiko_is_always_watching_youが追加された日付が判明したことで仮説が反証されたこと、その一方でrenoteされつづけていたことから削除しました。

与謝野晶子ミームとか、レターパックとか、正直そんなに面白くない。それだけはみなさんに伝えたかった。

いかがでしたか?今後も与謝野晶子先生の動向に目が離せませんね!

付録・「与謝野晶子」ミーム年表

抜けがある可能性が十分にあります!

2023年03月06日初版から更新していません。

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