個人サイトについてこの一年を振り返る
「個人サイトを語ろう Advent Calendar 2025」の6日目の記事です。
こんにちは。yuinoidです。昨年に引き続き個人サイトをテーマとするAdvent Calendarに参加するということで、改めて自己紹介をして、この一年を振り返ってみたいと思います。
まず、このサイト「100%health」は、「あの頃見た創作系個人サイトのスタイルを模倣したポートフォリオサイト」という意識で作成しています。「あの頃見た創作系個人サイト」というのは、わたしがゼロ年代に見ていた、イラストとか小説とかを公開していた個人サイトをイメージしているということです。
つまり、ノスタルジーと憧れです。あの頃みた、なんか「シュッ」としててかっこよくて、いい感じで、いい感じの絵がたくさん載ってるサイト。そんなサイトを作りたくて、2019年から増築を重ねているのがこのサイトなのです。
このサイトは、「neocities」という、静的サイトホスティングサービスを利用して公開しています。その名の通りかつて隆盛を誇り、2019年にサービスを終了した「geocities」を意識したウェブサービスです。
neocitiesのリンクに飛んで「Sites on Neocities」に並んだサイトを見てみると分かる通り、比較的若い世代(しばしば10代前半を見かけるくらい!)の、多様な国籍の人々が個人サイトを運用していることがわかります。どれも個性的で、geocitiesスタイルを意識しつつも現代的なセンスを持ったサイトデザインを形作っています。
これらのサイトのデザインは、いわゆる「aesthetis(wikipediaでは「インターネット・エスセティック」)」と呼ばれる、視覚的な雰囲気を様式としてジャンル化するネット上のサブカルチャーをもとにしています。
neocitiesはもともとはgeocities代替サービスとして人気を誇ったのですが、2018年にTumblr(ブログを作成できるSNS)で成人向けコンテンツが禁止されたことに反抗したコミュニティがneocitiesに移動したことで、現在のような雰囲気の個人サイトが多く作られるようになりました。
Tumblrばユーザーがブログを作成し、ブログのテーマを細かく改良したり、テーマを一からつくることもできます。また、「リブログ」という他者の投稿を自分のブログに再投稿できる機能があり、自分のブログに作りたい雰囲気のテーマを作成し、それに合わせて雰囲気のいい他者の投稿をリブログすることで、テーマ感が強いブログを運用することができました。
リブログは、他者の投稿を再投稿する機能です。再投稿する際、その投稿にコメントやハッシュタグを付加することができます(ツイッターでいうと、引用RTでコメントやハッシュタグをつけるようなイメージ)。Tumblrユーザーは、それぞれ好きな雰囲気でコミュニティをつくり、リブログで好みの投稿に、雰囲気を形容するハッシュタグをつけて投稿をシェアするようになります。フォローしたユーザーがリブログすると、自分のTLにもそれが表示され、自分もリブログされた投稿をリブログすることができるのです。
こうして、好みの雰囲気でつながったコミュニティでシェアしていくうちに、リブログのハッシュタグでその好みの雰囲気を表現した名称が生まれます。これがaestheticなのです。
たとえばdreamcoreやweirdcoreなどの雰囲気を表す名称はこのような流れで10年代前半から中盤にかけて生まれ、vaporwaveの影響をうけ、視覚的な雰囲気を表すラベルを総称して「aesthetic」と遡及的に括られるようになりました。
neocities上のブログの多くは歴史的経緯から、Tumblr文化の流れをくんでいます。それが、上記で見たようなaestheticな個人サイトが多い理由なのです。
さて、この1年の振り返りをしたいと思います。
まず特筆すべきは、8月15日に「ネオ日本語ウェブリング」に参加したことです。neocitiesユーザーを中心に日本語話者や日本語学習者をつなげるウェブリングとして、今年05月31日に「ちょき」さんが作成しました。
neocities上に日本語コミュニティが形成されてきたのはここ1、2年なのですが、この「ネオ日本語ウェブリング」はこのコミュニティをまとめるきっかけとなりました。
わたしがこのウェブリングを知ったのは、「HTMLエネルギー運動」という、インディーウェブ運動に関する運動がきっかけでした。
ここ数年でインディーウェブ的なムーブメントを表現する言葉をよく見るようになりました。
記憶にあるものを書き出してみると、ふるくは「Vernacular Web」という言葉があり (2005)、neociitesを含めたムーブメントは「anti-design brutalism」という言葉で形容され(2017)、近年ではアートプロジェクトとしての「HTMLエネルギー」(2019)、意識が高いZINE風の「クラフトインターネット」(2024)、技術コミュニティの「ミンゲイインターネット」(2025)といった言葉が記憶に新しいです。
ウェブデザインに注目した「brutalist websites」や対抗文化的な「IndieWeb」、Tumblrを活用したアートムーブメント「ポストインターネットアート」もこうした動向に数えられるかもしれません。
ともかく、HTMLエネルギー運動です。Laurel SchwulstさんとElliott CostさんがはじめたHTMLエネルギー運動はHTML Dayというイベントをこれまで3回開催しているようで、今年の8月2日にもさまざまな国でHTML Dayが祝われ、イベントが開催されたようでした。
neocitiesもこれに協賛していたのか、一時、公式サイトのヘッダーにHTML Dayを祝う文言が掲げてありました。わたしがHTML Dayを知ったのは、HTML Dayが終わった8月中旬だったと思います。
HTML Dayを祝うイベントは東京でも開催されていました。8月2日に行われた北千住デザインさん主催の「HTML DAY 2025 TOKYO」という名前のイベントです。参加者は思い思いにHTMLを書いてHTMLエナジーを感じよう、という趣旨のイベントのようです。
話が長くなってしまいました。わたしが「ネオ日本語ウェブリング」の存在を知ったのは、このイベントにウェブリング主催のちょきさんが参加していたからでした。
正確にいうと、すでにウェブリングに参加していたちょきさん、みかんさん、JSさんがイベントに参加しており、イベントの主催者や参加者がneocitiesを使ってサイトを作っていたからです。イベントでは手軽にHTMLを書いて公開できるとしてneocitiesが紹介されており、参加者の多くがneociitesを使ってHTMLを書き、サイトを公開していました。
イベントにはアートやデザイン系の興味から参加している人も多いようでしたが、すでにneocitiesで個人サイトを作っている日本在住の人も参加していたのです。
つまりまとめると、HTMLエネルギー運動のイベントを後から知り、neocitiesで公開されていたイベントの成果物をつうじてneocitiesをつかっている日本語話者のサイトを知ったのです。これらのサイトを通じてウェブリングの存在を知り、わたしが参加したのが8月15日だったということです。
上ではneociitesのコミュニティについてよく「知っている風を吹かせて」歴史について語ってしまいましたが、実は日本語コミュニティの存在はあまり知りませんでした。
HTML Dayのイベントと、neocities日本語コミュニティの存在を知ったのは、結構なインパクトでした。インディーウェブや個人サイトについて、流行ってるというような話はどことなく聞いていたけど遠い話のようで、こうしたできごとをきっかけに「流行ってる......!?」というような実感を伴って感じられたのです。
ウェブリング参加者の一部の方とはこのサイトと相互リンクになっていただけました。相互リンク。とてもいい文化です。
書いているうちに、アドベントカレンダーの趣旨と合っているのかよくわからない、山もなければオチもないような文章となってしまったのですが、このサイトの更新履歴を見返してすこし書いてみたいと思います。
やはり2025年前半に相互リンクをしていただける方が増えたのがうれしかったですね。SNS(twitterやmisskeyなど)で相互リンクになっていただける方を呼びかけていたのが大きいのかもしれませんが、色々な方に相互リンクになっていただけました。
アドベントカレンダー参加者の方もよかったら相互リンクになりませんか?......よかったら。意味とかはないんですけど。増えたら嬉しいので。
個人サイトとSNSの使い分けというトピックが記事の一例にありました。わたしは普段、misskeyという分散型SNSのとても小さなサーバーで投稿しています。
覚えている方がいるでしょうか、昔(2017年)、mastodonという分散SNSが話題になりました。misskeyは、mastodonと同じActivityPubというプロトコルに対応しているため、じつは投稿を閲覧したりアカウントをフォローしたり、相互にリアクションが可能なのです。ActivityPubでつながったSNSのつながりの総体をfediverseといいます。
個人サイトとの使い分けでいうと、私個人は意識して使い分けてはいません。しいていえば、個人サイトは情報を「ストック」するために運用しているようなフシがあります。
「ストック」と「フロー」という区別があります。とくに情報の場合は、その場かぎりで流れていくようなリアルタイム性が重視されるフロー情報と、何度も振り返る意図をって蓄積されるリアルタイム性があまり重視されないストック情報という区分けになります。
動的/静的という区別を重ね合わせることもできるかもしれません。SNSと個人サイトでいえば、SNSはその場かぎりの投稿がタイムラインを流れていくフロー型、個人サイトは高頻度な更新が要求されないストック型、といえるでしょうか。
このページは、「雑記」というコーナーに位置づけられています。ブログのようなもので、日付ベースで記事を公開する型をつくっています。
SNSとの使い分けでいうと、あまり積み重ねを重視せず、そのときどきで思ったことを書くのがSNSで、ある程度のまとまりをもって過去の振り返りをしたり、その時に興味があることを書くのが個人サイト(雑記)という使い分けをしています。
雑記ページには「タイムライン」タグを設定できるようにしています。
雑記では定期的に時系列で過去を振り返るリストをつくっています。これにタイムラインタグをつけ、「タイムライン」タグ一覧で表示すると、時系列でリストを並べた、年表形式で過去のできごとを振り返ることができるようにしています。
一覧をみると最近は滞っている(2025年8月以降投稿してない)ことがわかるとおもうんですが、それはともかく、一応、定期的に振り返って行ったできごとのリストを雑記ページに作成するようにしているのです。
リストはSNSの投稿をふりかえったり(fediverseには「notestock」という便利なサービスがある)、このサイトの更新履歴をみて作っています。そもそも自分はそこまで活動的な人間じゃないので、リストを作るのはそんなにコストがかかりません。
1年の振り返りもこんなもんかと思います。
反省を宣伝をすると、わたしはイラストを描いていて、このサイトでは描いたイラストを掲載してもいます。
最近はあまりイラストをかけていないので心苦しいです。来年こそは!
今年、ex. happyender girlというボーカロイド音楽サークルの「追憶の夏のハッピーエンダーガール - re: summer (never) ends」と「girls chronicle (2020-2024)」という2枚のアルバムのジャケットを描かせていただきました。ぜひみなさん聞いて下さいね。
あと、「分散SNS関連年表」という年表を2022年から継続して更新しています。今年は4月から更新できていないので、更新しないといけないと思っています。
まとめ:①ウェブリングに参加したので良かった ②相互リンクが増えてよかった ③相互リンクをもっと増やしたい ④もっといろいろ更新したかった
ここまで読んでくださったみなさま、まことにありがとうございました。みなさんの個人サイトライフが来年もよきものになりますように🎵。